古民家〜自然との共生のかたち〜

古民家〜自然との共生のかたち〜

しがらきの里を訪れる人が、まず心惹かれるのが、その景色の中に佇む古民家の姿です。茅葺きの屋根、土壁のぬくもり、年輪を重ねた柱の手触り。それらすべてが、どこか懐かしく、けれども新鮮な驚きとして胸に届きます。

この古民家は、単なる昔の家ではありません。地域で長い年月を生きた木々や土、竹や藁など、自然の恵みそのものを材料にして建てられた、日本の伝統建築の結晶です。夏には風が通り、冬には陽を取り込む――自然と衝突せず、調和しながら暮らす知恵が細部に息づいています。

しがらきの里

『すべて自然に従い、あるがままの簡素な生活をする事こそ、真の文明人の生き方である』
そう語ったのは、岡田茂吉師です。自然のあり方に耳を傾けることが、健康や暮らしの本質であると説かれました。しがらきの里の古民家もまた、まさにこの精神を体現する“住まい”です。人が自然に従って生きるとはどういうことか、その答えが空間そのものに表れています。

修復された古民家は、現在、事務所や集いの場としても活用されています。古材を生かしつつ、現代の暮らしに寄り添うように手を加えることで、住まいは過去の遺物ではなく、いまを生きる場所としてよみがえりました。その姿は、伝統と現代をつなぐ一つの希望です。

しがらきの里

ここに身を置くと、時間の流れがふとゆるやかになるのを感じます。囲炉裏に薪をくべる音、木の床を裸足で歩いたときの感触、雨音が軒を叩く静かな午後。何気ない瞬間に、五感が呼び覚まされていきます。そこには、人と自然のやさしい関係性が、今も息づいているのです。

しがらきの里

岡田茂吉師は『自然のままにすれば、いかがわしいものを入れなくてもよい』と述べられました。これは農に限らず、住まいにも通じる教えといえるでしょう。自然のままの素材で、自然の力に逆らわず建てられた家こそが、人の心と身体をほんとうに癒してくれる。古民家に滞在した人々の穏やかな表情は、その証しです。

しがらきの里の古民家は、建築物である以前に、“暮らしの思想”を伝える場です。土と木と人がともに呼吸し、共に歳月を重ねていく――
その営みは、未来の住まい方へのヒントとなり、次の世代への贈りものとなるはずです。

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