取り組む人々

浅野 直子

浅野 直子

カテゴリー :
生産品 :
エリア :
  • 東北ブロック
お名前
浅野 直子
生産地
福島県福島市
自然農法歴
2018年〜
規模
畑:1.5反 / 果樹:30本
主要作物
大豆、ワイン用ブドウ
浅野 直子
   

【秀明自然農法との出会い】

2004年に故郷福島に戻り、福島で生活している時には気付かなかった梅、桃、梨、林檎などの果樹畑の花々、田園風景の美しさに感動し、知人がやっていた秀明自然農法を自分もしたいと自然に思いました。母が体調を崩していたこともあり、母や沢山の人に安全で美味しい米や野菜を食べさせたいという思いもありました。田んぼは友人たちも手伝ってくれて、地元の議員さん方も応援してくれ、地元新聞に載せていただいたこともあり、ワイワイ楽しくさせていただいていました。SNN福島センターメンバーの子どもや学生たちのために畑も借りて皆で野菜を育てました。

仕事もしながらの兼業だったので忙しく、不慣れで大変な思いをしていた私に、隣の田んぼのおじいちゃんが「姉ちゃん、作業しなくても、とにかく毎日来て田んぼの周りを歩いたらいい。稲は持ち主の足音を聞いて育つんだ」と教えてくれました。その他にもいろいろと教えてくれて、そのおじいちゃんの言葉は今も私の心に残っています。

美味しい野菜やお米が採れるようになってきた矢先、東日本大震災が起こりました。福島市内は内陸のため津波の被害はなかったものの、放射能という見たことも聞いたこともない脅威に襲われました。福島市も放射線量が高かったため、田んぼも畑も一切入れなくなってしまいました。母と一緒にベランダで大切に育てていたみかんや野菜、きれいな花々は全て撤去されて捨てられてしまいました。放射線量がかなり高く、住民が避難した村や町の田んぼや果樹畑は汚染土壌の置き場となり、黒い土嚢袋が次々と置かれて、美しい田園風景は全く様変わりしてしまいました。本当に悲しかったし、もう秀明自然農法ができないかもしれないと不安にもなりました。

でも、落ち込んでばかりもいられない、こんな時だからこそできることから始めようと気持ちを切り替え、震災から3年後、線量の少ない地域で収穫した野菜や全国から集めた食材で料理教室を開催し、マルシェなどにも出店しました。自分自身も福島市でもう一度自然農法をやりたいという思いは日に日に大きくなりました。

そして震災から7年、やっと大豆畑を始めることができました。畑の土壌からも大豆からも放射性物質は検出されず、甘くて美味しい大豆ができました。本当に嬉しかったです。

【自然から学んだこと】

大豆を育てて3年後、大豆畑の地主さんから「ワイン用の葡萄栽培をしていた人が病気で倒れてずっとほったらかしになっている。息子さんはできないから育ててくれる人を探している。見つからなかったら全ての木を切るらしい。浅野さんやりませんか?」と声をかけてくれました。私はワインが好きで、いつか自分で造りたいという思いもありましたし、その畑は持ち主さんが、違う所に商売用で育てていた葡萄畑とは全く違って、大切な家族と自分のために大事に大事に育ててきた葡萄畑だったと聞いて、少し不安もありましたが引き継ぐことにしました。初めて収穫した葡萄はワイン用の葡萄とは思えない程甘くて美味しくて驚きました。ワインの醸造も、酸化防止剤や砂糖などを一切使わずに醸造してくれるワイナリーを探してお願いすることができました。ワイナリーからは「酸化防止剤を入れないとどうなるかわかりませんよ」と言われましたが出来上がったワインは、ワイナリーの方も美味しいと言ってくれるほど良いワインでした。本当に感謝です。

全てが初めてで何もわかりませんでしたが、SNNスタッフの酒井賢治さんに年に2回、芽かきや剪定方法、土壌改良、点穴の掘り方などを教えていただいています。お手伝いに来てくれる人たちも沢山いますが、その中の人たちも、自分の畑のことや秀明自然農法について詳しく教えていただいています。
 
収穫量も2021年は160キロ、2022年は123キロ、2023年は192.35キロ採れました。そして2024年は東北エリアの仲間が収穫お手伝いに来てくれたこともあり、前年の倍の422.85キロの葡萄が収穫できました。

2024年は特に仕事などが忙しくてなかなか畑に行けず葡萄が心配でしたが、自然農法をしている仲間たちがいろいろと協力してくれて、草刈を手伝ってくれたり、私がなかなか畑に行けない時は写真を撮って葡萄の状況を私に送ってくれたりしました。私自身も作業はできなくても葡萄畑に行き、葡萄たちに祈りと感謝の思いを伝えています。2022年は、コガネムシの被害もありましたが、毎日お祈りして、コガネムシさんにお願いしましたら3日ぐらいでいなくなりました。最初、周囲からは「葡萄は虫が付き易いから自然農法では絶対にできない」と言われましたが、皆の愛情を受けて、葡萄君たちは毎年すくすく育ってくれています。

今、福島県内には秀明自然農法に取り組んでいる仲間たちも沢山できました。葡萄畑を見学にきて、自然農法に触れ、東京新宿生まれ、新宿育ちなのに法律事務所を辞めて福島に移住して秀明自然農法を頑張っている青年や、2024年に初めて葡萄畑の近くに田んぼを借りて、米作りに挑戦した青年もいます。1反8.5俵の美味しいお米ができました。ある御夫婦は、美容室をやりながら2023年初めての農業でしたが、美味しい大豆やカボチャが沢山収穫できました。私の葡萄の枝を挿木して葡萄も育てていて、田んぼもやりたいと言っています。

2024年、福島センターでは一人1畝運動や各家庭での家庭菜園に取り組み、53名の方が自家採種に成功しました。土を触ったことの無い人や虫が苦手な人など色々な人がいましたが、秀明自然農法で自家採種に取り組むことで、この農法の素晴らしさ、楽しさ、自然の神秘、収穫の喜び、秀明自然農法作物の美味しさなどを知ることができました。土を触ることで短気だったご主人が穏やかになったり、気持ちが落ち込んでいたのが元気になったり、体調が良くなったりと土からパワーを感じる人も沢山いました。本当にすごいです。

【メッセージ】

私たちが今毎日元気に秀明自然農法をできることがまず奇跡ですごいことだし、震災時のことを思えば、皆で種をまいて、作物を育てて、種を採ることができる、美味しい地元の野菜やお米が食べられることは当たり前じゃないし大奇跡です、この感謝を嚙み締めながら秀明自然農法に取り組んでいます。私たちはこれからも皆で力を合わせて、自然環境にも人にも優しく、美しくて美味しくて素晴らしい秀明自然農法をどんどん伝えていきたいし、種という神様から頂いた宝石を作らせていただき、全てのことを神様に少しでもご恩返しさせて頂きたいと思います。そして福島は勿論、福島から世界へ農業の芸術を伝えていきたいと思っています。