堆肥

自然農法における堆肥とは
自然農法では、農薬や肥料を一切使わず、自然の力を最大限に活かして作物を育てることを目指します。この自然の力を「自然力X」と呼び、太陽や水、大地のエネルギーが調和して生み出される生命の根源的な力です。岡田茂吉師が提唱した自然農法では、この自然力Xこそが肥料であるということを信じ、その力を引き出すことが最も重要だとされています。
その中で、堆肥に対する考え方も独自のものがあります。一般的に堆肥は、作物に栄養を与える“肥料”として使われますが、秀明自然農法ではそれとは根本的に異なり、土壌環境を整えるための補助的な手段と位置づけられています。


秀明自然農法で使用される自然堆肥は、草葉や落ち葉など自然由来の素材から成り、人工的な添加や処理は加えません。自然に分解される過程で土壌の性質を穏やかに改善します。主な働きは以下のとおりです:
- 土を温める:堆肥が土壌に敷かれることで、土の表面温度を保ち、植物が根を張りやすい環境を作ります。
- 土を乾かさない:堆肥の層が土壌の表面にあることで、土が過度に乾燥するのを防ぎ、適度な湿度を保つ役割を果たします。
- 土を固めない:堆肥を施すことで、土壌が固くならず、通気性を保ちながら柔らかい状態を維持します。
これらの役割により、自然力Xが発揮されやすい環境が整っていきます。
とくに農法を始めたばかりの圃場では、過去の肥料や農薬の影響で土が疲弊していることもあります。自然堆肥は、そうした土が本来の健康を取り戻すまでの過程で有効に働きます。
自然堆肥は、自然力Xが働く土を整えるための“静かな助け”です。使用の有無は圃場の状態によって判断され、土壌が整えば、堆肥を使わずとも作物は健やかに育ちます。
秀明自然農法では、堆肥の使用について厳密なルールはありません。必要だと判断すれば使用してよく、整っていれば使用しなくてよい。この柔軟性が特徴です。
ただし、堆肥はあくまでも補助的手段であり、使えば使うほど良いというものではありません。自然力Xを信じるという姿勢が、根本にあるべきです。
自然農法を継続するうちに、土壌は徐々に本来の力を取り戻し、自然力Xが十分に発揮されるようになります。岡田茂吉師は、こうした状態を「理想の土」と表現しました。理想の土では、自然のエネルギーが響き合い、作物が自然の恵みをそのまま吸収して育ちます。
そのため、自然堆肥の使用は“通過点”と考えられます。土の声を聴き、土の健康を整える目的で必要に応じて堆肥を使い、最終的には堆肥に頼らない農を目指します。
自然力Xに委ね、土との対話を重ねる農。そこに、持続可能で健やかな食の未来が開けていくのです。

