自然力X

自然力X

The Natural Power X いのちを育む“見えない力”

「どうして、肥料も農薬も使わないのに、こんなに元気に育つの?」 秀明自然農法の畑を訪れた方が、驚いたように口にする言葉です。葉は力強く広がり、土はふかふかとやわらかく、作物は自らの意志で伸びていくかのようにたくましく育っています。

この農法の根底には、「自然には本来、いのちを育てる力が満ちている」という考え方があります。太陽の光や熱は、植物の成長を支える基本的なエネルギーです。月の満ち欠けは潮のリズムを生み、地下水の動きや根の吸収にも影響を与えていると言われています。そして、土は、あらゆるいのちを受けとめ、育んでくれる場所。自然界には多くの見えない営みがあります。岡田茂吉師はその目に見えない働きを「自然力X」と名づけました。Xという記号には、「未知だけれど確かにあるもの」という意味が込められています。まだ科学では捉えきれないけれど、確かにそこに“ある”と感じられる――それが自然力Xです。

自然力X
自然力X

Gratitude to soil 土に感謝するということ

私たちは長い間、より多収穫を得るために、肥料や農薬の力を借りてきました。それは一つの知恵であり、技術の成果でもありました。しかし、その便利さの影で、土本来の力が失われていく現実にも気づかされています。化学肥料や過剰な有機肥料を施し続けることで土が弱ってしまったのです。すると、病害虫が発生しやすくなり、作物の味も、いのちの力も、どこかぼやけたものになっていきます。昔の野菜の方が栄養価がはるかに高いというのも、当然のことかもしれません。

岡田師は、土はいのちを育てる力のかたまりであると説いています。そして、自然力Xがしっかりと土に満ちていれば、余計なものを加える必要はないと唱えました。自然力Xこそが作物にとって“本質的な栄養”なのだと。この力を引き出すために、特別な技術や資材は必要ありません。大切なのはむしろ、私たちの心の持ち方です。

「土に感謝し、穢さず、尊ぶこと」
「作物をいのちとして接し、愛情をもって育てること」

こうした丁寧な姿勢が、土の中の見えない循環を整え、自然力Xがより豊かに働くようになると、私たちは体験を通して学びました。自然農法の畑では、余計なものを足すことより、不要なものを足さないことが大切にされます。手間はかかりますが、その分、土はじっくりと力を蓄え、作物もゆっくりと本来の力を育んでいきます。

ある農家の方が、こんなふうに語ってくださいました。
「土に『よろしくお願いします』と声をかけて種をまくと、不思議と発芽がそろうんです。」
「毎朝、野菜に『ありがとう』と話しかけながら水やりをしていると、葉の色が違って見えるんです。」

これは、科学では測れないことかもしれません。でも、こうした感覚こそが、自然力Xの“はたらき”を物語っているのかもしれません。

現代の農業は、気候変動や土壌劣化など、多くの課題に直面しています。そんな中、自然のリズムに耳を澄ませ、いのちの連なりに寄り添っていく自然農法は、持続可能な未来を支える新しい農のかたちとして注目されています。自然力Xは、私たちの祈りや感謝に応えて、土の奥からそっと働きかけてくれているのかもしれません。

自然力X
自然力X