感謝と愛情

朝露に濡れた葉が、やさしく太陽の光を受け止める静かな朝。鳥のさえずりとともに畑に立つと、まるで自然が「おはよう」と語りかけてくるようです。私たちの祖先は、このように日々の営みのなかで自然と語り合い、太陽、水、大地、風、そしてそこに生きる無数の命に対して感謝と祈りを捧げてきました。
かつての人々は、すべての生き物に「魂」が宿ると信じ、微生物から土や石などの無機物、風や雨などの自然現象に至るまで、命ある存在として尊んできました。だからこそ、自然は支配すべき対象ではなく、共に生きる「仲間」だったのです。岡田茂吉師の提唱された自然農法の根幹には、この「自然順応・自然尊重」という、太古から続く日本人の生き方があります。


感謝と愛情の循環
田畑に立つ人が自然に感謝し、心を込めて土に向き合えば、その愛情は作物に伝わり、作物を食べる人にも届きます。そして、作物をいただく人が「ありがとう」の気持ちを持って味わえば、「感謝と愛情の循環」の中に加わることができます。こうして私たちは、自然と生産者、そして消費者がつながる「いのちの環」の一部になることができるのです。「自家採種」や「肥料を使わない栽培」なども、すべてはこの感謝と愛情の精神から生まれています。
このような食卓にふれたとき、人は自然の愛情に包まれ、心身ともに癒されていきます。「なんだか、やさしい味がする」「食べたら元気が湧いてきた」——そんな感動の一つひとつが、大自然からの贈りものなのです。
私たちは岡田師の教えを礎に、自然農法という生き方を広めることによって、世界に感謝と愛情の環を広げていきたいと願っています。自然に寄り添い、命を尊び合う暮らしの中にこそ、これからの時代に本当に求められる「豊かさ」があるのではないでしょうか。

